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地域に根差す測量会社の挑戦―DXで見えない技術とノウハウを“資産化”した軌跡

業種:測量サービス業

従業員数:約15名

売上高:約3億円

支援者:認定AI・IoTコンサルタント(AIC)

 

■はじめに:「地域密着」と「成長」を両立するには

この企業は、地域に根ざした測量サービス業として長年活動してきました。官公庁案件や民間開発、インフラ調査など、信頼に基づいた実績を積み重ねてきた一方で、将来を見据えると以下のような課題がありました。

 

・若手技術者の定着率が低く、技術継承が進まない

・現場対応がベテランに集中し、属人性が強まっている

・デジタル機器は導入済だが、活用が限定的

・こうした背景から、経営者は「デジタル化と人材活用の両立」を掲げて企業体質の転換を目指しました。そして、その実現を伴走支援したのが認定AI・IoTコンサルタント(AIC)です。

 

■経営の想いと目指す姿

最初のステップは、「経営者の想いを明文化すること」。AICはヒアリングを通じて、次の4つの“目指す姿”を定義しました。

 

1.人と設備の生産性向上:少人数でも多くの案件を効率よく対応できる体制へ

2.経営利益の向上:利益率の向上と管理コストの削減を両立

3.最新の測量システムの構築:レーザー測量・ドローン・3D化などへの対応強化

4.経営体質の強化:属人化から脱却し、チームで成果を出せる企業へ

この“将来像”が、DX推進の羅針盤となったのです。

 

■現場に潜んでいた経営課題

AICは現場社員との対話と業務の観察を通じて、以下の課題を浮き彫りにしました。

① 業務の属人化

現場の段取り・顧客対応・トラブル解決などが特定のベテランに集中。若手は現場に同行してもノウハウが言語化されておらず、成長に時間がかかっていた。

 

② ノウハウの見える化ができていない

案件の対応記録は紙・Excel・口頭などバラバラ。調査手法の違いや機器ごとの設定ノウハウが、データとして残されていなかった。

 

③ サービス自体にデジタル活用が進んでいない

測量機器自体は最新だが、工程管理や成果物作成は手作業中心。納品に至るまでのプロセスに時間がかかっていた。

 

■AICによる解決プロセス:DXは“現場からの共感”で動く

ステップ① 経営目標・業務改善目標の整理

AICは、経営者と中期計画のレビューを行い、現場レベルでの目標設定へと落とし込みました。例えば「1件あたりの業務時間を20%削減」「作業レポートの作成時間を半分に」など、定量的な目標を設定しました。

 

ステップ② 業務フロー分析と課題抽出

現場ごとに「どのように仕事が進むのか」をフローチャート化。案件受注から報告書提出までの業務を細分化して確認すると、以下が判明しました。

顧客対応に重複がある

図面や写真データの管理が統一されていない

成果物の修正・再提出が頻繁に発生している

 

ステップ③ 情報共有ツールの導入と定着支援

課題の根本は“情報の断片化”。そこでAICは、**Microsoft 365(MS365)**をベースとした情報共有環境を構築しました。

OneDriveで現場別フォルダを作成し、写真・図面・議事録を共有

Teamsで日々の業務連絡とプロジェクトごとのチャットを開始

Plannerを用いて各案件の進捗を“見える化”

こうして「報告しやすい」「探しやすい」「全員が見える」環境が整い、コミュニケーションの質も向上しました。

 

ステップ④ AIによる予測システム(PoC)を実施

次に取り組んだのが、過去の案件データを活用した**AI予測の概念実証(PoC)**です。具体的には、案件種別・規模・場所・工期などの履歴から、見積もり工数や納期を予測する仕組みを構築。

 

これにより、

経験に頼らず、客観的な見積もりと日程調整が可能に

顧客への対応スピードが向上

若手でも案件の見積提案ができるようになった

などの成果が生まれました。

 

■成果:数字と行動に表れた変化

・AICの支援開始から約10カ月。企業には以下のような変化が起こりました。

・業報告書の作成時間が1件あたり50%削減

・年間約150時間分の属人的対応が標準化により削減

・AI予測により見積もり精度が向上し、案件受注率が+12%改善

・Teamsの利用頻度が週1回 → 毎日5回以上に増加

・若手技術者の業務理解・自信が明確に向上(社内アンケートで87%が「成長を実感」)

 

■AICの支援の意義:道を示し、ともに歩む“改革のパートナー”

このDXの成功要因は、「ツール導入」ではなく「仕組みと行動の変革」にありました。その変革を導いたのが、認定AI・IoTコンサルタント(AIC)の存在です。

経営者はこう語ります。

「“誰に相談すればいいかわからなかった”状態から、“これからも一緒に考えられるパートナー”ができた。技術だけじゃなく、組織のこと、人のことを理解してくれたのが大きい。」

 

■まとめ:小さな組織でも、“見える化”と“つながり”がDXを動かす

この測量会社の事例は、小規模組織でもDXによって確かな成果を出せることを示しています。重要なのは、ツールそのものではなく、「何のために、誰と、どのように活用するか」です。

AICは、単なる技術導入者ではなく、“想いを形にする設計者”であり、変化を支える伴走者”です。

 

「経験が全て」だった現場に、“共有と予測”という新しい武器をもたらしたこの事例は、地域企業の未来に大きなヒントを与えてくれるでしょう。