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DXで「営業と製造をつなぐ」会社へ―情報共有と業務改革で全社最適化を実現

業種:産業機械製造・その他事業

従業員数:約140名

売上高:約55億円

支援者:認定AI・IoTコンサルタント(AIC)

 

■はじめに:DXの目的は「経営効果」と「顧客価値」の最大化

本事例の企業は、産業機械をはじめとした装置の開発・製造・販売を行う中堅メーカーであり、全国に顧客を持ち、製品のカスタマイズ性やアフターサポートの丁寧さに定評があります。近年、売上の安定とともに多品種・短納期のニーズが高まり、企業としても「高付加価値対応力の強化」が求められていました。

そうした中で経営層が掲げた方針は、「DXで業務効率を上げ、顧客提案の質を高めること」。単なるツール導入ではなく、「営業・製造・管理部門を貫く全社最適」を見据えた本格的な改革のスタートでした。そしてこの変革を主導したのが、認定AI・IoTコンサルタント(AIC)です。

 

■目指す姿:社内の無駄を減らし、外への価値を高める

AICとの初回ミーティングで明確になった“目指す姿”は次の4つでした。

 

1.業務効率化:重複作業や報告の無駄を排除し、スピードを上げる

2.生産性向上:人が付加価値業務に集中できる時間を確保

3.顧客への提案力向上:営業と技術がリアルタイムで情報を共有し、対応の質を高める

4.全社最適化:部門ごとの最適ではなく、企業全体としての業務連携と意思決定の精度を向上

特に「情報共有の不十分さ」が、これら全てのボトルネックになっていたのです。

 

■現場で浮き彫りになった経営課題

AICが各部門に対して業務フローと課題ヒアリングを実施したところ、次の3つの根本的な課題が見えてきました。

 

① 業務が効率化できていない

→ 顧客情報や案件進捗が営業部門と技術部門で共有されておらず、重複調査や確認の繰り返しが常態化。

 

② 社内報告書の作成に多くの時間がかかっている

→ Excelや紙ベースでの報告・進捗管理が多く、社員1人あたり週5時間以上がレポート作成に費やされていた。

 

③ 営業活動に割ける時間が少ない

→ 会議・資料作成・部門間の打ち合わせに追われ、営業の現場活動が後回しになっていた。

 

■AICの支援:人・業務・技術をつなぐ実践的アプローチ

認定AI・IoTコンサルタント(AIC)は、表面的なITツールの導入ではなく、「人の行動を変えること」から改革に着手しました。

 

① 情報共有プロジェクトの立ち上げ

営業・技術・管理部門の代表による横断型プロジェクトチームを編成。経営層も定例ミーティングに参加し、「全社で本気で取り組む姿勢」を形にしました。

 

② デジタルの“5S活動”を展開

製造業の現場で定着している「5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)」の考え方を、情報管理に応用。ファイルの命名規則、保存場所、閲覧ルールを定め、デジタル資産の整頓を推進しました。

 

③ 業務フローの可視化と課題抽出

各部門の業務フローを図式化し、情報の流れ・タイミング・重複作業の有無を確認。フロー間のギャップが多く、部門ごとに属人的なやり方が存在することが分かりました。

 

④ 情報共有ツールの選定と導入

AICは柔軟性・拡張性・現場適応性を重視し、kintone(サイボウズ社)を情報共有基盤として提案。主な用途は:

・顧客情報・案件情報のリアルタイム共有

・製造・設計部門との進捗連携

・社内報告や日報の電子化

・検索・参照のスピード向上

現場の抵抗を減らすため、最初は営業部門の「見積進捗管理」からスモールスタートし、段階的に他部門へと展開しました。

 

⑤ 生成AIのPoC(概念実証)も同時に実施

情報活用の次の段階として、生成AI(ChatGPT API)を連携させ、社内文書やマニュアルの自動要約・検索・FAQ回答のPoCを実施。「探す時間を削減する」という視点で、大きな効果が見られました。

 

■導入後の変化と成果

AIC支援から約10か月後、以下のような明確な成果が現れました。

・報告資料作成時間:平均50%削減(週5時間→2.5時間)

・営業現場活動時間:月間20時間増加(訪問数が2割増)

・情報共有の迅速化により、部門間調整にかかる時間を40%短縮

・顧客からの評価:「対応が早くなった」との声が増加

・社内アンケートで「働きやすくなった」との回答が78%

 

■AICの貢献:組織に“変われる自信”を与えた伴走者

今回のプロジェクトで印象的だったのは、AICが「答えを与える支援者」ではなく、「一緒に答えを見つける伴走者」**だったということです。

プロジェクトリーダーの営業部長は次のように語っています。

「最初は“ツールを入れれば変わる”と思っていました。でもAICさんが教えてくれたのは、“どう動くかを考え、仕組みを作る”ことの大切さでした」

ツールはあくまで手段。その背後にある「組織の行動」と「情報の流れ」を変えることで、企業体質そのものが変化し始めたのです。

 

■まとめ:全社最適の第一歩は「情報の整理と共有」から

この企業の事例が示しているのは、「DX=派手な投資や最新技術」ではなく、「見えないムダを減らし、価値を高める取り組み」であるという本質です。

認定AI・IoTコンサルタント(AIC)の支援のもと、kintoneや生成AIという適切なツールを選び、業務と人を丁寧につないだことで、確実な成果が生まれました。

 

「全社最適」という壮大な目標も、第一歩は小さな“情報の見える化”から。DXを本気で考える企業にとって、この取り組みは非常に参考になる実例となるでしょう。