
業種:精油ケミカルメーカー
従業員数:約150名
売上高:約150億円
支援者:認定AI・IoTコンサルタント(AIC)
■背景とパーパス:経営理念の実現のためにデジタルを手段として
この精油ケミカルメーカーは、創業50年を迎え、サステナブルな社会の実現と高付加価値な製品づくりを企業パーパスに掲げていました。しかし、製造現場には依然として「紙・口伝・経験」に頼る業務が多く、近年の原料価格高騰や納期短縮要求、労働人口減少といった外部環境の変化に柔軟に対応できていないという課題が顕在化していました。
そこで同社は、「DXの本質は技術導入ではなく人の変革」という認識のもと、「小さな成功体験の積み重ね」「現場の声から出発する課題解決」という3つの指針を掲げ、全社的なDXの第一歩を踏み出しました。推進の中心となったのが、外部専門家である認定AI・IoTコンサルタント(AIC)です。
■課題:属人性、在庫の不一致、原料不足という「見えないロス」
精油ケミカルメーカーならではの特徴として、多品種少量の製造ライン、危険物を扱う高精度な工程があり、計画・調達・製造が密接に連動する必要があります。しかし、現場には以下の課題が存在していました。
① 生産計画の属人化:熟練者による勘と経験に頼る工程スケジューリングが続いていた。
② 計画と実績のズレによる原料不足:予定外の原料切れが頻発し、調達部門との連携ミスが起きていた。
③ 実在庫と帳簿のズレ:手書きの記録・転記ミス・棚卸の遅れにより、帳簿上の在庫と現実が合わないという問題が常態化。
これらは数字に現れない「見えない損失」であり、企業の競争力をじわじわと蝕んでいました。
■支援:AICによる現場密着型アプローチ
認定AI・IoTコンサルタント(AIC)は、単なるIT導入の指導者ではありません。本事例では、以下のように、現場に寄り添うハンズオン支援を徹底しました。
① 経営と現場をつなぐ「対話の場」の創出
まずAICは、経営層と現場リーダーが一堂に会する「DX対話会議」を提案。ここで各現場の課題をオープンに話し合い、経営課題と現場の認識のズレを埋めました。この対話により、「現場の気づき」が企業課題解決の出発点になるという文化を醸成しました。
② 小さな成功体験の演出
いきなり大規模なシステム導入ではなく、まずは既存のExcelツールを活用した需要予測モデルを構築。過去2年分の販売実績と季節性、得意先の発注傾向を掛け合わせることで、誤差±10%以内の予測を実現しました。これにより、計画担当者の属人性を脱却し、他部署でも「自分たちもやってみたい」という声が上がりました。
③ 現場負担を減らすMES導入とERP連携
次に取り組んだのは、MES(製造実行システム)の導入です。手書きの日報をやめ、タブレット入力に切り替えることで、リアルタイムで「作業開始・終了」「原材料投入」「仕掛品状態」を可視化。これをERPと連携させることで、実在庫の自動更新と帳簿との整合性が保たれるようになりました。
また、予定外作業や設備トラブルによる**「ムダな作業時間の記録」**も自動で取得可能になり、業務改善に直結するデータが蓄積されるようになりました。
■導入技術と連携スキーム
分野 導入技術・ツール 主な効果
生産管理 MES 現場情報のリアルタイム可視化、属人性の排除
計画予測 Excelベースの需要予測モデル 過去データ活用による予測精度向上
基幹業務 ERP(既存システム) 会計・在庫・生産の統合管理
DX支援 OCA/RAP(自動化プランニング支援) 計画立案自動化、分析時間の削減
■成果と変化
AIC支援開始から1年。企業全体で以下のような具体的な成果が生まれました。
生産計画の自動化率:約60%
原料切れによる緊急購買の削減:前年比▲40%
帳簿と実在庫の整合率:95%超に改善
紙記録の削減率:約80%(月1,000枚→200枚へ)
従業員満足度調査にて「働きやすさ向上」を実感する回答:73%
■AICの存在意義と今後
本事例を通じて明らかになったのは、「単なるIT導入」ではなく、「人とプロセスの変革」こそがDXの核心であるということです。認定AI・IoTコンサルタント(AIC)は、経営層と現場、システムと人、計画と実行を橋渡しする存在として、極めて重要な役割を果たしました。
今後は、得られたデータを活用した品質予測、エネルギー消費最適化、設備保全の高度化へと取り組みが拡大する予定です。その先導役として、AICが引き続き伴走支援を行っています。
■まとめ:現場とともに描いた「人を変えるDX」
この精油ケミカルメーカーの事例は、技術を「手段」とし、人を「主役」として進めるDXの理想形を体現しています。認定AI・IoTコンサルタント(AIC)の支援がなければ、技術導入が形骸化し、現場は疲弊していたかもしれません。
「現場の小さな声をすくい、現実的な一歩から始める」。この姿勢こそが、変化を恐れず挑戦し続ける企業文化を醸成し、DXを本物にするのです。今後もAICの支援のもと、この企業はさらに強靭なものづくり体制を築いていくでしょう。
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