
業種:産業機械専門商社
従業員数:約60名
売上高:約30億円
支援者:認定AI・IoTコンサルタント(AIC)
■他人事だったDXが、自社の生存戦略に変わった瞬間
この産業機械専門商社は、国内外の中小製造業向けに設備や機器を提供する老舗企業です。多くの顧客との信頼関係に支えられ、営業社員の経験と人脈を武器に、長年安定した業績を維持してきました。
しかし、近年は以下のような兆候が見え始めていました。
新規顧客の獲得に時間がかかる
ベテラン営業の引退により案件管理が属人化
社内連携に時間がかかり、若手が育ちにくい
にもかかわらず、当初の経営層の意識は、「うちは製造業じゃないし、DXなんて関係ない」「あれは一部の大企業がやるもの」というものでした。まさに「DXは他人事」だったのです。
そんな企業の認識を根底から変え、実践的なDXを実現したのが、認定AI・IoTコンサルタント(AIC)の存在でした。
■経営課題:営業・業務の非効率と属人性
AICが最初に提示したのは、「現場の声をもとにした業務フローの可視化」でした。その分析から浮かび上がったのは、以下の経営課題です。
業務効率の悪さ:案件の進捗管理が個人ごとにバラバラで、属人化が進んでいた
人材育成に時間がかかる:業務手順や対応履歴が共有されておらず、若手は“背中を見て学ぶ”しかない状況
仕事の進め方や社内連携の煩雑さ:営業・業務・技術間のやりとりが口頭や紙ベースで行われ、情報が分断されていた
これらは日々の業務に影響を及ぼし、「案件対応の遅れ」「商談機会のロス」「教育負荷の増加」という形で経営リスクとなっていました。
■目指す姿:「ボトルネックの解消」と「営業効率の向上」
経営層と現場リーダーへのヒアリングを通して、AICはDX推進にあたり次の2つを企業の「目指す姿」として明確化しました。
ボトルネックの解消:属人化や業務の重複、情報の分断を減らし、仕事の流れをスムーズに
営業効率の向上:案件管理の標準化・共有化によって、成約率や商談スピードを改善
このビジョンのもと、AICは単なるツール導入にとどまらない、人とプロセスを変えるアプローチを実践していきます。
■支援ステップ:見える化から始まる変革
① 業務フロー分析と課題抽出
AICはまず、1週間かけて全社員の業務内容をヒアリングし、業務フローを詳細に可視化。「誰が、何を、いつ、どうやって行っているか」を洗い出しました。結果、次のような課題が明確になりました。
同じ情報が複数回入力されている
見積書や商談メモの保存先が人によって異なる
案件の進捗が営業個人の頭の中にしかない
② 解決策の立案と優先順位づけ
次に、課題を「改善インパクト×導入容易性」でマトリクス化し、優先すべきDXテーマを特定。まずは営業部門から着手する方針となりました。
③ セールスフォース(SFA/CRM)の導入
AICは、営業活動の標準化と可視化を目的にSalesforceを導入。具体的には:
案件進捗のステータス管理(受注確度・予算・顧客ニーズなど)
顧客との接点履歴の記録(訪問・電話・メール内容)
営業チーム全体での情報共有と報告の省力化
結果として、営業社員一人あたりの商談対応件数が月20件→30件に増加。営業会議でも報告時間が半減し、「何を報告すべきか」「どこに集中すべきか」が明確になりました。
④ チャット+AI検索システムの導入
社内コミュニケーションを改善するために、チャットツール(Slack)とAI型ナレッジ検索エンジンを連携導入。これにより、
過去の商談事例や技術資料を自然言語で検索可能に
若手が「誰に聞けばいいか」迷わずに業務を進行可能に
営業・技術・業務間のやりとりがリアルタイムかつ履歴に残る形に改善
といった、“知の共有化”と“指導時間の短縮”が実現しました。
■導入成果:変化が“数字と行動”に現れる
AICによる支援から1年。企業内に以下のような明確な成果が表れました。
案件対応スピード:平均対応期間が30%短縮
営業成約率:前年比+12%
若手営業の独り立ちまでの期間:8カ月→5カ月に短縮
会議・報告資料の作成時間:週7時間→2時間に削減
社員アンケート「働きやすくなった」と回答:81%
また、情報がクラウド上に集約されたことで、在宅勤務時の業務継続性も担保され、「コロナ以降に変化した働き方」にも柔軟に対応できる企業体質へと変化しました。
■AICの存在がもたらした“企業文化の転換”
経営層は当初、「ITツール導入=コスト」と捉えていました。しかし、AICの伴走型支援により、「IT=経営効率の源泉」であるという理解が浸透。さらに、現場社員からも「業務がやりやすくなった」「誰がやっても成果が出る仕組みがある」との声が聞かれるようになりました。
つまり、「DX=特別なこと」ではなく、「日々の業務改善の延長線」と捉える文化が育ち始めたのです。
■まとめ:「DXなんて不要」が「DXは我が事」へと変わるプロセス
この産業機械商社の事例は、DXへの第一歩を踏み出すことの大切さを物語っています。もしAICの支援がなければ、「忙しいから後回し」「今のままで問題ない」といった思考から抜け出せず、結果として成長機会を逃していたかもしれません。
認定AI・IoTコンサルタント(AIC)は、単なるIT導入支援者ではなく、企業の思考と行動の改革を促す“変革の伴走者”です。これからも同社は、AICとともにさらなる業務改革と持続的成長に向けた挑戦を続けていくでしょう。
コメントをお書きください