
「DXは最近はじめました」
「うちの会社もDXに取り組んでいます」
そうした声をよく耳にするようになりました。
しかし実際に内容を聞いてみると、「クラウド会計を導入した」「業務アプリを試験導入した」「SFAを入れてみた」といった表面的な話ばかり。そこには、本来のDXの視点が欠けていることが多く見受けられます。
DX疲れとDX離れが始まっている
「ITを導入したが、業務が改善されない」
「ツールを入れたが社員が使わない」
「支援を受けたが結局やることが増えただけ」
こうした声が増えています。いわゆる「DX疲れ」「DX離れ」です。
原因は明らかです。多くの“DX支援”が、実は単なるIT導入支援にとどまっているからです。
DX(Digital Transformation)は本来、企業の経営やビジネスモデルを根本から変革する取り組みです。ツール導入は、その一部分にすぎません。にもかかわらず、「ITツールを導入=DX」と誤解してしまった“専門家”や“支援者”によって、現場は混乱し、経営者は幻滅してしまっているのです。
DXの本質は、「データの利活用による経営変革」です。
もっと平たく言えば、これまで感覚や経験に頼っていた企業活動を、「データ」に基づいて見える化し、判断し、改善していく企業文化を根付かせることにあります。
特に重要なのは、データを一部の管理職やIT担当者だけが扱うのではなく、末端の社員にまで活用を浸透させることです。営業、製造、接客、バックオフィスなど、すべての現場に「データで考える」意識とスキルを根付かせることが、DXの第一歩です。
「データ活用」と聞くと、大がかりで難しいことのように思われがちですが、決してそうではありません。
営業部門では「今月の見込み受注」「商品別売上トレンド」を誰でも見られるようにする
製造部門では「設備の稼働率」「不良率の推移」を日報から自動で抽出する
サービス業では「お客様の再来店率」「クレーム件数の変化」を定期的に分析する
こうした小さな一歩を積み重ねていくことで、現場は“自分ごと”として考えるようになります。
経営者のビジョンを「見える」かたちにする
もう一つ、DXで絶対に欠かせない視点があります。
それは、経営者の思いやビジョンを、数値やデータに落とし込むことです。
「地域に根ざした会社にしたい」
「顧客満足度を高めたい」
「働きやすい職場にしたい」
こうした抽象的な理想を、誰もが理解できる指標(KPI)や行動計画に翻訳する。これがDXにおいて経営者が果たすべき最大の役割です。
例えば:
「顧客満足度を高めたい」→ 再購入率、レビュー評価点数、アンケート回収率で可視化
「社員の働きやすさを向上」→ 残業時間、離職率、有給取得率で定量管理
「地域密着型企業に」→ 地元顧客比率、地域イベント参加数などで測定
これにより、現場社員も経営と同じ地図を見て動けるようになります。会社全体が一つの方向を向く、というのはこうした「見える化」から始まるのです。
ツールは「手段」であって「目的」ではない
繰り返しますが、DXとはツール導入ではありません。
もちろん、AI・IoT・RPA・BIツールなどの導入は効果的な武器になり得ます。しかし、目的がなければ、どんなに優れた武器も意味を持ちません。むしろ、使いこなせないまま高コストだけが残り、現場の信頼を失うだけです。
DXを語る支援者や士業が、「このツールが便利です」「このクラウドが安いです」といった話を始めたら要注意です。それはDXではなく、IT販売です。
真の支援とは、「御社のビジョンは何ですか?」「それを誰がどうやって支えるのか?」をともに考え、人・業務・データをつなぐ仕組みを一緒に創ることなのです。
支援者や士業が果たすべき役割は、ツールの提案ではありません。
それは、「人とデータをつなぐ力を育てること」「組織にデータ文化を根付かせること」です。
「見える化すれば現場が動く」と考えるのは幻想です。
大切なのは、「見える化したあと、どう使うか?」の運用設計と、社員の意識変革です。
特に中小企業では、ITに強い人材が限られているからこそ、現場と経営をつなぐ伴走者が必要です。それが、真のDX支援者なのです。
今、求められているのは「便利なツールの知識」ではなく、「データと経営をつなぐ視点」です。
もしあなたが支援者であるなら、まず「経営と現場が同じビジョンを共有し、データで行動しているか?」を問い直してください。
もしあなたが経営者であるなら、「自社のビジョンは、社員一人ひとりの行動につながっているか?」を考えてみてください。
DXは、決して疲れるものではありません。本質を押さえれば、企業は自然と変わり始めます。
そしてその変化を、支援者と経営者が共に導いていく時代が、いま始まっているのです。
本物のDX支援者になる際にはAIPA・RAPAグループの各資格を取得して頂けると真のDXの意味と意義と仕事観が広がります。
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